◆介護の尊厳と倫理 

               大塚家成


 

            

まず、尊厳とは、平たく言うと、これは自分が大切だと思っているものを他人からも大切に扱ってほしいものと考えました。これだけは他人に譲れない大切なものなので、他人からズケズケ言われたり、大切な領域に土足で入って来られたくないことです。新聞紙上等で、よく話題にのぼる「尊厳死」があります。ガン末期等の痛みで、人格が崩壊していくのを家族に見られるくらいなら、ちゃんとした普段の姿で末路をみずから迎えたいという意味だと思います。それが安楽死にも連なります。ここで述べた<ちゃんとした普段の姿>が、まさに尊厳に当たると考えました。

 

次に、倫理とは、わたしにとって自律性という捉え方をしていました。仏教には戒律という言葉があります。これは、戒と律という2つの言葉から成り立っているそうです。戒とは、集団を管理する際のルールです。律とは、個人が自分で決めた誓いで自分をコントロール(文字通り律する)することです。そういうことから、相手の尊厳を守っていこうとする、または大切にしようとする行為が、倫理なんだと考えました。こうして、わたしたち介護職員は、日々振り返ってケアに当たらせていただいています。

 

当然、「尊厳」は、お年寄りに限らず、ケアに当たらせていただいている側にもあります。なのに、今回、国は介護報酬を引き下げてきました。引き下げに伴う悪影響はあります。年収が引き下げられ、低所得者層から貧困層にドンドン近づいていきます(介護職員一人当たり月額12000円上げるというが、ボーナスで大幅に下げられます)。普通、人が募集しても来ない場合、少し給与を上げて募集するところを、介護業界だけは年収下げますけど、来てくださいとやっている。人は来ない、毎年常勤者は辞め、経験年数3~5年ばかり。人が足りないなら、外国人を導入する、とまるで物が足りないから物を補充するみたいだ。いま、介護の現場は崩壊しています。質の劣化です。そもそもお年寄り一人一人にケアを確実に届けようと「ユニットケア」が始まりました。それが、ふたつのユニットを一つに合体させ、少ない人数で業務を回しています。ケアより業務になってきている。

 

アホの財務省と厚労省の官僚と国が決定した「介護報酬の引き下げ」は、如何に介護職員の「尊厳」を傷つけているか。いま、この国の介護には「尊厳」が失われようとしている。


                          (伏見区醍醐在住)