ケアの本質について話し合える場

               各務 勝博


 

 私が京都で仕事を始めたのは約20年前。それまで大阪の障害者施設で働いていたのですが、京都でホームヘルパー派遣のコーディネーターとして、初めて在宅福祉の現場で働き始めました。

山奥の施設を出て、歴史ある京都という街で在宅福祉の仕事に就いた私は、毎日が新しいことばかりで、大変ではありましたが、非常に刺激的な毎日を送っていました。特に、新しくサービスを利用される方の調査時に、様々な方々の人生に触れられることがとても楽しかった(と言っては失礼かもしれませんが)ことを覚えています。

私が京都で働き始めた1994年は、高齢者福祉について政府が「公的(当時はこう言っていた)介護保険制度」制定に向けて大きた方針を打ち出していた時代で、京都でも頻繁に公聴会やら集会やらが行われていました。私自身は、1990年に大熊由紀子さんの『「寝たきり老人」のいる国いない国』や山井和則さんの『世界の高齢者福祉』を読み、その後北欧での研修に参加したりしていて、高齢者福祉、在宅福祉に関心が向く中、機会があって前職場の京都福祉サービス協会で働くことになったのですが、実は京都に来た大きな理由として、京都で活動拠点にしている劇団の活動に参加したことがありました。そんな私にとって、利用者の方が話される自分が主人公のストーリーはとても魅力的で、「誰もがその人生の主人公だ」というテーマが私の頭に強く焼き付くことになりました2000年に初めて知った心理即興劇「プレイバックシアター」はそんな私の気持ちにぴたっと共鳴するものでした。その後、自宅の1階スペースで取り組んだプレイバックシアター公演では毎回、「あなたが主人公」とタイトルをつけて行ってきました。

介護保険制度は幾多の改定を重ね、システマテックではありますが、ますます私たちの「生活」から離れたものになっていっている気がしますし、福祉に係る資格の上位資格や「専門○○士」などが次々と誕生し、「質の向上」が強調されればされるほど、生活の場から「ケア」が遠ざかって行っている気がします。「ケアを考える会」はそんな私にとって、ケアの本質について本音で話し合える、とても楽しい場となってます。


                 (京都医健専門学校社会福祉科)